ストーリーテラー
その昔、30年ほど前に、松尾正徳というペンネームで角川書店から『極楽パーティ』という名の小説を出しました。
同じ年(1989年)に長男が生まれ、その長男も30歳を過ぎ(2020年)、「おれの生きた時代は、なぜこうも悪いことばかりが起こるのだろう」と嘆いたのです。
彼の生まれた年(1989年)に「平成」がはじまり、阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件があり、アメリカ同時多発テロ、リーマンショック、東日本大震災、そして、新型コロナ……30歳を過ぎた息子が嘆くのもムリはないのかもしれません。
少しばかり申しわけない気持ちになりつつも、いやいや、これは30年周期の時代の気分についての話ではないか、と、思いついたのです。
30歳までの自分の人生観を象徴するように『極楽パーティ』を書き、そのあとの30年は息子が言うようにつらい時代があり、そして、いま私は、還暦を過ぎました。
さて、これからを、どう生きるか。つぎの30年……それを考えたとき、改めて『極楽パーティ』というキーワードが浮かんだのです。
世界中を新型コロナという「やっかいなもの」が覆い、つらいことばかりに目がいきがちですが、改めて、いまだからこそ、必要な「気分」みたいなものがあるはずです。その気分を称して『極楽パーティ』と名づけてみたということかもしれません。
いや、名づけてみたいじゃないですか。
これからの人生を『極楽パーティ』と呼んでみたい。そうは思いませんか?
2021年2月
パーティは、まず美女の登場からはじまります。世界中の美女を探索しながら、彼女のたちの美しさの迷宮にはいりこみ、美女を愛する方法について考えていきます。
そんな快楽の数々を心から楽しむにはコツが必要なのです。まずは、見る、感じる、そして、考える。
エロではありません。
快楽を学ぶことが大切です。
池波正太郎の『剣客商売』はシリーズものです。そういう意味で、子宝ロダン「シリーズ」です。
ついでながら言っておくと『子宝ロダン』は『剣客商売』をめざしています。まったくテイストが違いますが。
テイストどころか、おもしさも豊かさも気品も深みも、なにもかも「まだまだ」ですが、めざしているのは、おもしろい活劇である、ということです。
そこをまず宣言したうえで、考えたのは「江戸」という事実でありながらフィクションたりうる背景です。登場人物はふつうにチョンマゲだったりします。剣を持ってたりするし。それが日本の歴史的な事実である——。
それに負けない現代劇……というあたりを模索して「子宝ロダン」という人物と「ビー玉」という道具を考えました。
ビー玉は、時空をこえます。
それをあやつるのが、子宝ロダンという記憶をなくした人物です。
男と女の妖艶のシーンをストーリーの中心に据えてみたいと構想しています。「いい女」は、まず大切なテーマです。「愛」も、もちろん大切。
ちょっとセクシーで、活劇で、胸が踊るストーリーを書きたい。
それが『子宝ロダン』プロジェクトの基本コンセプトです。
2004年から2019年まで、15年わたり、日本自動車連盟(JAF)会員誌『JAF Mate』で1ページの連載コラムを書いていました。内容は、クルマのトラブルでJAFを呼んだ人たちと、その救援作業をしたJAF隊員に話を聞いて、そのときの様子をドキュメント風にまとめたものです。「JAFストーリー」というタイトルで、150回以上の連載になりました。
まずは「困ったときのエピソード」を募集し、メールや手紙で送ってもらい、住んでいる場所に行き、トラブルの現場を取材し、翌日、隊員に話を聞きにいく……と、かなり丁寧な取材を続けました。
パンク、キーの閉じこめ、バッテリーあがり、山道で迷う、落輪・脱輪、などなど、トラブルの内容はさまざまです。家族で旅行、恋人とドライブ、営業の仕事中、子どもの発熱で病院に、など、そのときの状況も異なります。そして、ほとんどすべての人が、JAFのレッカー車がやってきたときに「地獄に仏とは、このことだ」と思ったのです。
そういう感動とはべつに、JAF隊員たちの、冷静であろうとする姿勢も魅力的です。トラブルに遭遇したドライバーにとっては一生に一度の大事件でも、隊員たちにとっては日常業務。このコントラストもまた、おもしろい。
改めて読み返してみると、救援ドキュメントをこえて、ちょっとした感動の物語ばかりだと思い、ここに少しずつアップすることにしました。
タイトルは「オレンジ色の天使について語られた地獄に仏な物語」としました。連載当時は人物名をすべて本名で書きましたが、ここでは、すべて仮名にしてみました。すると、また新たに「小さな感動ストーリー」として生命を得たような気がしています。
60歳を過ぎてからの生きかたを考える、しかも「極楽パーティ」という視線を加味する、なんて、正直、混乱します。そこで、初心に戻ることを考えました。「子どものこころ」です。
子どものこころをまんなかにして、改めて世のなかを見つめてみよう。それが、コンセプトです。
明治大学に2021年から「子どものこころクリニック」という精神科クリニックができました。院長に抜擢されたのが、山登敬之さん。私の大学時代の先輩です。学生時代、山登さんは演劇をやっていました。卒業してからも演劇への熱は冷めず、20年ほど前に誘われて、私も社会人演劇みたいなこともやりました。
そういう仲間です。その山登さんと対談をすることにしました。児童心理の専門的な話ではありません。もちろん、精神医学でも、教育学でもありません。
ただの、おじさんの雑談です。
でも、そう言いきるには、少しばかりもったいない、おもしろい話ができたのではないかと自負しています。
世のなかには悩んでいる人が多いようです。
そんなことに悩まなくてもいいのでは? というのは、ささやかな私の小さな見解です。
しかも、私は、世のなかの「悩み」に対して答えるのが案外好きときています。
というわけで「人生相談」はいかがですか、と。
ちなみに『フリフリ人生相談』は、JAFメディアワークスのサイトに飛びます。パーティ会場からそのまま酒を飲んで自動車を運転してはいけません。