写真家のジャンルはいっぱい
写真には、いろいろある。ファッション写真、芸術写真、グラビア写真、商品写真、風景写真、報道写真、動物写真、コマーシャル写真、天体写真、鉄道写真、航空写真、山岳写真、スポーツ写真……限りない。
それぞれのジャンルでプロがいたり愛好家がいたりするわけだが、写真家ジョーイ・ライトにも明確なジャンルがある。
「フロリダ州オーランドを拠点に活躍するスイムウェア写真のプロ」である。
キャデラックのオープンカーの香りがする大きくて強いアメリカ、派手で、明るくて、健康的で、ポジティブな水着写真。雑誌『PLAYBOY』のセンターフォールドのような。『Sports Illustrated SwimsuitEdition』のような。
フロリダ、水着モデル、アメリカの香り
まずは、モデルたちがおっぱい大きくて、ヒップもでかい。野性的である。肉食系。褐色。背景の色も濃い。
これが好きとか、そそられるとか、グッとくるとか、そういう感想は置いといて、とにかく、実にわかりやすい。「おれはもっと華奢で清楚で色白で、か弱いタイプが好きだ」なんて人はお呼びでない。
2010年に写真撮影機器メーカー「Westcott」のトッププロのひとりに選ばれている。カメラはNikonを使用。これまでの写真の半分くらいをD80で撮ったとインタビューで答えている。
最近のクライアントはキャロウェイゴルフ、NFLのアトランタ・ファルコンズ、パーフェクト・タン・ビキニ、セミノールハードロックホテル&カジノ、など。
ゴルフウェア、アメリカンフットボールのチーム、水着メーカー、ホテルとカジノ……それらのパンフレットとかWebページを撮影しているということだ。
水着写真でビジネスをする!
彼のインスタから、彼の個人サイトに飛べる。行ってみると、これがほんとに、よくできたサイトなのだ。写っているのが水着の美女ばかりなので、よけいなことを考えなくてよく、楽しいのである。
作品集は「これぞ、アメリカン!」の数々。そういえば、ジョーイ・ライトのインスタに書かれた肩書きは「マーメイド・ハンター」である。マーメイド・ハンターが撮ったマーメイドの水着写真がいっぱいだ!
「撮影料金」も明示されている。写真館、撮影スタジオ的な仕事も、もちろんやってますよ、と。
2〜3時間で5カット。
プロのヘアメイクつき。
かんたんなスタイリングアシスタントつき。
10枚のレタッチ画像つき。
これで、ハウマッチ? はい、950ドル! およそ10万円。追加レタッチは1枚50ドル。
「下のボタンを押して予約してね」
とある。
撮影から作品からセミナーから、すべて、売る
YouTubeのチャンネルにも飛べる。2分くらいの撮影風景。インスタやトップ画面で見られる写真の撮影風景だ。特典映像みたいなものだね。
『POSED MAG』というWebマガジンもあって、PDFのダウンロード方式でネット購入可能。101枚の写真が9ドル。
レッスンもある。3日間のワークショップの参加費は2,150ドル。エージェンシー・モデルを撮影して、レタッチを学び、ゲストも登場して。16人限定。
ショップも、もちろん、ある。
「ジョーイのマスターレタッチキット」が100ドル。これはPhotoshopとLightroomのレタッチキットだけではなく、ワコムの設定なんてものもふくまれる。
「ジョーイのマイアミロケーションマップ」は50ドル。これは、マイアミの撮影場所のマップ。14のビーチの場所、屋内および屋外スタジオの場所、オススメ撮影時刻などのヒントなどの情報。
もうね、なんでもかんでも、売れるものはぜんぶ売ってるのである。
契約社会アメリカだから?
契約社会であるアメリカのビジネスって、うまくいくと、ほんとにウィンウィン、私もウィン、モデルもウィン、撮影場所も機材もウィン(通販サイトに飛んで、彼の使っている撮影機材やバッグなどをAmazonで購入できる)、ってことになっている。
「契約社会であるアメリカのビジネス」なんて限定しなくても、いまや、世界中のカメラマンやモデルやマーメイドたち(笑)は、同じような方法論で写真を撮り撮られ、インスタにアップし、ネットで拡散して、ユーザーやファンを増やしていくわけだ。ときにはクライアントの目に止まるってこともある。自撮りばっかりより、ジョーイ・ライトに撮ってもらったほうが写真にパワーが出るのは当然なのだ。
でも、日本にはこのスタイルが成立してない気がするのだが、それは、私が知らないだけ?
コスプレ撮影会とか、水着モデル撮影会とかが盛況なのだろうが、それを撮影している人たちはプロではない。プロのカメラマンがグラビア撮影をやっているが、それらの写真の権利関係を想像すると、カメラマンがPDF写真集をジャカスカ売るということには、ならない気がする。
日本でも、このビジネスは成立するはず
もちろん、アメリカだからといって、誰でも彼みたいに仕事ができるとは限らない。ジョーイが最初にやった「プロとしての撮影」は友人の結婚式だったそうだが、その後も撮影するたびに「撮影料」を聞かれるようになり、プロになることを考えはじめたとか。プロになる前から「撮影料はいくら?」と聞かれるってことは、要するに基本的に写真がうまいのである。写っている人が「いい写真だな」と思える写真を撮るってことだが、実は、これがむずかしい。
ジョーイ・ライトはこんなことを言っている。
「私が業界に入る前に、誰かが私に言ってくれたらよかったのにと思うことがあります。ビジネスの学位を取っておけ、と」
彼は、いま、そこをしっかりとわかったうえで、写真でビジネスをやっているってことなのだろう。日本では、まだまだ、この方向に育っていない気がする。権利関係とか慣習とかの弊害もあるかもしれないが、まずは、カメラマンの欲望と知恵だという気がするのだが……。