JAFストーリー

004 またね、とは言えない

 

 大城由季さんは、嘉手納基地で働いている。

 

「基地のなかのレストランとかのメニューとかポスターとか。外国から歌手がきたらポスターとかをつくる、そんな仕事です」

 

 仕事は4時半に終わる。

 昨年の514日——。

 

「友だちふたりと会う約束してたんですよ。ひとりが宜野湾……南のほうで、渡すものがあって、もうひとりがうるま市で、また北に戻る感じで。あとのほうの友だちが結婚したから、会ってご飯食べようみたいな。すごい急いでたんですね。だから、高速を使ったんですけど。沖縄南インターから高速に乗ってふっと見たら、Hになってて、ああって思って……」

 

 ラジエータのヒートゲージがHまで上昇していたのである。

 怖くなった大城さんは、バスの停留所エリアにクルマを入れて止まった。

 JAFに電話した。20分ほどで宮里勇人隊員が来た。レッカー車で牽引してくれた。北中城インターで降りて、そこから修理工場に電話した。

 

 宮里隊員はそこで帰っていったのだが、すぐに戻ってきた。

 

「なんでかなって思ったら、心配だから、修理工場のひとが来るまで待ってますって……暗くなったし不安ですからって。でも、大丈夫ですからって言って、じゃあって帰られたんです」

 

 ところが、工場のほうの行き違いで、結局来られなくなってしまった。仕方なく大城さんはペットボトルで水を汲みラジエータに入れてみた。

 

 大丈夫かと思い、走りはじめると、やはりゲージはHを示した。あとでわかったことだが、ラジエーターが故障していたのである。結局は、取り替えるしかなかった。

 

「ああこれはもうだめだって思って……レストランがあったんで、レストランの駐車場に入れて、また電話したんです。今度は宮里さんの携帯に直接かけたんですね。履歴が残ってたから。すみませんって、さっき来てもらった大城ですけど、ごめんなさい、またオーバーヒートになりましたって、工場からも来れなくなったって……。きっと怒られるかなって思ったんですよ。そしたら、いいですよ、すぐに行きますって」

 

 結局、自宅まで運んでもらった。友人にも会えなくなり、落ちこんでいたのに、宮里隊員の明るさで、すっかり気持ちがなごんだ。

 

「ほんとに、来てくれて助かったっていう気持ちになって……いい仕事だなって。人助けって、いい仕事だなぁって」

 

 つくづく大城さんは思った。

 

「今年の1月の2日に、タイヤがパンクしたんですね。そのときにJAFを呼んで、来てくれたのが、同じかただったんです。宮里さん」

 

 別れるときに「じゃまたね」と言いかけた。

 

「でも、また会うときは、なにかトラブルがあったときなんですよね。またねとは言えないから、ありがとうございましたって……」